ベンチャー企業で得られる貴重なことのひとつは,中断されないことだ。職種によって,時間の単位は異なる。文章の校正係は,15分ごとに作業を中断しても,生産性にさして影響を与えないだろう。だが,ハッキングの時間単位はとても長い。問題のすべてを頭に収めるだけで1時間を要するかもしれない。そんな時に,あなたが書類を埋めるのを忘れたことを指摘する電話が来たりすると,その影響は計り知れない。
ハッカーが質問をされて,スクリーンから目を離す時に恐ろしく不機嫌な目つきをしているのはこのためだ。ハッカーの頭の中では,巨大なトランプの家が崩れているんだ。
中断されるかもしれないと感じるだけで,ハッカーは難しいプロジェクトを始めるのを遅らせる。ハッカーが夜遅くに仕事をしたがるのはそのせいだ。素晴らしいソフトウェアをブースで書くことが,深夜ででもなければほとんど不可能なのもまたそうだ。
ベンチャー企業の大きな利点は,邪魔するような人がまだいないということだ。事務部はないから,書類の催促も電話もかかってこない。
Paul Graham 川合史朗(訳) (2005). ハッカーと画家:コンピュータ時代の創造者たち オーム社 pp.94 脚注
(引用者注:第6章脚注1。非常に共感できる内容である)
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