ベンチャー企業は蚊みたいなものだ。熊なら叩かれてもけろっとしているだろうし,蟹なら叩かれても硬い甲羅で身を守れるが,蚊はただひとつのことのためだけに作られている。刺すことだ。防御に対しては一切エネルギーが使われていない。種としては,蚊はたくさんいることが防御となっているが,それは一匹一匹の蚊にとってはあまり慰めにはならないだろう。
ベンチャー企業は,蚊と同じように,オール・オア・ナッシングの立場に立つことが多い。そして最後の瞬間までどちらに転ぶかは分からないものだ。Viawebにも何度も危ない場面があった。私たちの軌跡はまるでサイン曲線のようなものだった。幸いにして曲線の頂点で買収されることができたが,本当にぎりぎりだったんだ。カリフォルニアにYahoo!を訪問して会社の買収の交渉をしていたのと並行して,私たちは会議室を借りて会社存続を賭けた次のラウンドの資本投下を確実にしてもらうよう投資家たちに掛け合っていたんだ。
Paul Graham 川合史朗(訳) (2005). ハッカーと画家:コンピュータ時代の創造者たち オーム社 pp.108
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