多くの自己愛人間が世間に見せる表向きの人格(ペルソナ)は,しばしば優越感に満ちている。だが,傲慢な仮面の裏に潜んでいるのは,ふくらんだ自尊心でできたもろい風船で,ただ優秀なだけでは満たされず,非常に優秀なだけでもだめで,他者より優れていなければ何の価値もない。彼らにとって価値は絶対的なものでなく,つねに相対的な尺度で測られる。
彼らの観点からすると,他人の株があがれば,自動的に自分の株がさがる。逆に,自信をなくしたときは,相手をけなし,おとしめれば,自尊心が取り戻せる。彼らが高飛車で批判的,完璧主義で権力欲が強いのも,そのためだ。欠点や恥の汚点からできるだけ遠ざかっていられる立場を確保したいのだ。人生の逆風によって風船が割れたときでも,他者が自分より劣っていると証明できれば自力で修復できる。ときにはそれが巧妙な方法で行なわれる。
サンディ・ホチキス 江口泰子(訳) (2009). 結局,自分のことしか考えない人たち:自己愛人間とどうつきあえばいいのか 草思社 pp.33-34
(Hotchkiss, S. (2002). Why is it always about you? New York: Free Press.)
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