他のだれかが自分にないものをもっているとき,優越感を確保したいという自己愛人間の欲求は邪魔される。無意識の深部に,自分の優位を脅かす他者の脅威があらわれ,心のなかの風船が割れる。「危険発生!危険発生!」警報が鳴り響く。「制圧せよ!」恥のざわめきを黙らせるために,彼らはどんな手段を選ぶだろうか。
答えは軽蔑だ。たとえば「だれそれは自分で思っているほど大物じゃないね」などという。その人がじっさいには謙虚で,まわりを不快にさせたことなどないとしても関係ない——これは恥の投げおろしと同類の歪曲で,現実に何の根拠もないだろう。
そしてそのあとに,相手の欠点をあげつらったかなり卑劣な内容のリストが続く。その目的は,たいてい無意識のうちに,他者をおとしめ,自分が相対的に優位な立場に復帰することにある。彼らが自分の中の感情に気づいたとしても(もちろん,つねに正当化されて),ねたみは断固,否認される。ねたみを認めれば自分の劣位を認めることになりかねず,自己愛人間にそれはありえない。
サンディ・ホチキス 江口泰子(訳) (2009). 結局,自分のことしか考えない人たち:自己愛人間とどうつきあえばいいのか 草思社 pp.38-39
(Hotchkiss, S. (2002). Why is it always about you? New York: Free Press.)
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