自己愛人間は,自分が征服したものを周囲にうらやましがらせようとするが,彼ら自身が愛の対象を激しくねたんでいることに気がつかない。彼らは本質的に競争心が強く,自分を魅了した相手の素晴らしさが,やがて彼らの心のなかに劣等感を生む。自分の賞賛の渇望を満たすはずの相手が脅威になりはじめると,自分を支えるために相手をおとしめなければならなくなる。相手の素晴らしさは彼らの価値を損なうものでもあり,破壊されなければならない。羨望が侮辱を,侮辱が破壊を生み,完璧を求める自己愛人現は憤懣と虚しさにまみれる。
彼らにとって,恥と同じくねたみも耐えがたく卑しい感情だ。そこでねたみを他者に押しつけて追い払う。投影という巧みな心の働きにより,ねたまれた側がねたみをもつ側に転換され,投影した側は世間ばかりか自分の目にも賞賛される存在であり続ける。同じメカニズムを用いて,彼らは破壊したいという衝動を相手に移しかえ,現実あるいは想像上のねたみに怯える。この歪曲のせいで親密な関係が築けない。
サンディ・ホチキス 江口泰子(訳) (2009). 結局,自分のことしか考えない人たち:自己愛人間とどうつきあえばいいのか 草思社 pp.161
(Hotchkiss, S. (2002). Why is it always about you? New York: Free Press.)
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