自己愛人間はしばしば,何らかの意味で欠陥があるか力が劣っていて,自分がコントロールしやすい相手を選ぶ。とはいえ,これは微妙な問題をはらむ。相手がただ踏みにじられ,あまりに惨めか欠点だらけに映れば理想化は危うい。そこで彼らは分裂(スプリッティング)を用いる。相手をよい人間と悪い人間に分裂させ,何らかの方法で良い面は保ち,悪い面は開閉可能な仕切りの奥に隔てておく。これは,ひとりの人間をよい面も悪い面も備えた複雑な存在とみなせない乳幼児のとらえ方に似ている。愛の対象はいつの瞬間もすべてよいかすべて悪いかのどちらかであり,評価は瞬時に入れ替わる。
サンディ・ホチキス 江口泰子(訳) (2009). 結局,自分のことしか考えない人たち:自己愛人間とどうつきあえばいいのか 草思社 pp.165
(Hotchkiss, S. (2002). Why is it always about you? New York: Free Press.)
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