自己愛の肥大した指導者は,自分が特別だという承認と権力をひたすら求め,それらが得られて当然と考える。欺瞞,歪曲,誘惑などの常套手段は,必要に応じて良心の呵責なしに使われる。彼らに足りないのは恥の意識だけで,とりわけ部下への共感により,彼らの動きが阻止されることはない。冷淡さや無関心さは礼儀や愛想の仮面の奥に隠されるが,一部の組織では大胆さは名誉のしるしだ。そのような職場では何でもまかり通り,社員は容赦なく利用され,指導者の期待に背けば激しく叱責され,不要になれば即座に解雇されても仕方がない。社員をぎりぎりまで引き伸ばして働かせ,ぽちんと切れると厄介払いする慣例はめずらしくなく,「ゴムバンド経営」と呼ばれる始末だ。
サンディ・ホチキス 江口泰子(訳) (2009). 結局,自分のことしか考えない人たち:自己愛人間とどうつきあえばいいのか 草思社 pp.189
(Hotchkiss, S. (2002). Why is it always about you? New York: Free Press.)
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