フォアラーは,学生が自身のことをどれぐらい鋭敏で如才なく,賢いと思いたがっているのか,知りたかった。あいまいな性格検査の記述を高く評価してしまったことは,彼らの自尊心に強力なパンチを食らわせただろう。そうだとすれば,自分の真実の姿を認めるつらさよりも,実験にだまされたことを否定する安易な道を選ぶのではないだろうか?
3週間後,フォアラーは,「みんなに採点してもらったシートから,うっかり名前を消してしまった」と言った。そして,「このまえと同じ採点をもう一度書き込むように」と頼んだ。本当は,名前など消していない。最初の採点と,やりなおしの採点とを比較するためである。すると,最初は5(パーフェクト)をつけた学生の半数が,もっと低い点をつけたと申告してきた。どうやら,だまされやすい人は,自分がだまされやすいという事実を認めるより,自分をだますほうが好きらしい。
リチャード・ワイズマン 殿村直子(訳) (2008). Qのしっぽはどっち向き?:3秒で人を見抜く心理学 日本放送出版協会 pp.34
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