子どもの嘘に関しては,興味深い実験がある。大好きなおもちゃを「見てはだめ」と言われたら,どうするかという実験だ。まず,子どもを実験室に招き入れ,一方の壁に向かって立っているように言う。実験社は,「これから,君の後ろにすごいおもちゃを置くよ」と言っておもちゃを置く。その後,実験者は,「ちょっと外へ行ってくるけど,振り向いておもちゃを見てはだめだよ」と言って,出て行く。子どもの様子は隠しカメラで撮影されている。数分後に実験者が戻ってきて,「おもちゃを見た?」と訊くと,3歳児は,ほとんどが見ているのに,そのうち半数は「見ていない」と言う。5歳児になると,全員が見て,全員が嘘をつく。この結果,「人はしゃべれるようになると嘘をつきはじめる」ことがほぼ確実と言える。また,驚くなかれ,親は自分の子どもが嘘をついている映像を見せられたとき,嘘をついているのか,本当のことを言っているのか,見抜くことができない。
リチャード・ワイズマン 殿村直子(訳) (2008). Qのしっぽはどっち向き?:3秒で人を見抜く心理学 日本放送出版協会 pp.62-63
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