似たような研究が,もっとも理性的と思われる場所,病院で行われた。じつは,医療関係者は驚くほど迷信深い。それは満月が行動におよぼす影響を扱った論文にも表れている。アメリカの研究チームが,1年間に病院へ搬送された負傷者千五百人近くの記録を調査したところ,満月と入院数,死亡率,負傷の種類,入院日数に関係はなかった。しかし,「ルナシー」という論文で発表された1987年の調査によると,救命室で治療に当たる人の64パーセントが,「満月は患者の行動に影響する」と信じていた。そのなかで,看護師の92パーセントが,満月の夜はストレスがかかると答えている。しかし,この報告は疑わしいかもしれない。というのも,そういうストレスがあるので「満月勤務手当て」を支給してもらいたいと答えているからだ。
リチャード・ワイズマン 殿村直子(訳) (2008). Qのしっぽはどっち向き?:3秒で人を見抜く心理学 日本放送出版協会 pp.116-117
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