なぜ,ジェイムズ・ヴィカリーは,ポップコーンとコークの売り上げを増加させたのに,デフロアーとペトラノフは,ベーコンの売り上げを増やせなかったのだろう?その謎は,1962年にやっと解けた。ヴィカリーが「アドバタイジング・エイジ」誌のインタビューで語ったところによると,サブリミナル効果と購買行動の関係は,まだ発表段階ではなかったのに,マスコミにリークされてしまったらしい。実際は,特許申請に必要な最小限のデータはそろったものの。あまりに少なすぎて効果を確認できたとは言いがたかった。国民も政界も,事実ではなく,虚偽の報告をもとに議論していたのだ。ヴィカリーは,インタビューの最後にこう言った。「私がしたことは,結局,新しい言葉を一般の人に知らせたっていうか……もうあのことは考えないようにしています」ヴィカリーは,人びとのあいだに「サブリミナル」という言葉をはやらせただけではない。彼の虚構の研究は都市伝説になり,一部の人は,今もサブリミナルメッセージで品物を買わせることができると信じている。
リチャード・ワイズマン 殿村直子(訳) (2008). Qのしっぽはどっち向き?:3秒で人を見抜く心理学 日本放送出版協会 pp.153-154
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