ペルハムらは,人名と居住地の関係,人名と結婚相手のとの関係だけにとどまらず,姓と職業選択の関係についても調べた。米国歯学会と米国法律協会の名簿をオンラインで検索したところ,歯科医には“Den”で始まる人の名前が“Law”で始まる名前の人よりも多く,法律家には“Den”よりも“Law”で始まる名前の人が多かった。さらに,金物屋と屋根屋のデータも調査した。ヤフーのインターネット・イエローページで全米第20位までの大都市にある金物屋(ハードウェアストア)と屋根屋(ルーフィングカンパニー)の経営者のファーストネームまたは姓が,HまたはRで始まっているかどうかを調べた。すると,金物屋の経営者にはHで始まる名前(「ハリス・ハードウェア」など)が多く,屋根屋にはRで始まる名前(「ラシド・ルーフィング」など)が多いことがわかった。ペルハムによれば,同じ傾向は政治にも当てはまる。2000年の大統領選挙のとき,Bで始まる姓の人にはブッシュ支持者,Gで始まる人にはゴア支持者が多かった。ペルハム教授は,この結果を「なぜスージーは海岸で貝殻を売るのか——潜在的自己中心主義と人生の重要な選択(Why Susie Sells Seashells by the Seashore: Implicit Egotism and Major Life Decisions)」という論文で発表した。その結論で,「こうした結果が表れるのは,人びとが無意識のうちに自分にとっていちばん大切な人を思い出させるものに引かれるせいなので,さして驚くことではない」と述べている。
リチャード・ワイズマン 殿村直子(訳) (2008). Qのしっぽはどっち向き?:3秒で人を見抜く心理学 日本放送出版協会 pp.160-161
(引用者注:2002年のJPSPに掲載された論文のことである)
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