身長とステータスの関係は,おもしろい現象をもたらす。ある人の身長がどのぐらいに見えるかは,その人の地位の高さによって変わるようだ。この興味深い現象を初めて科学的実験で確かめたのは,クイーンズランド大学の心理学者,ポール・ウィルソンだった。ウィルソンは,異なる学生グループに同僚の学者を紹介し,彼の身長がどのぐらいだと思うか尋ねた。学生には内緒で,ウィルソンは,グループごとに紹介の仕方を変えている。最初は,学生だと言い,次は講師,上級講師,そして最後には正教授だと紹介した。すると,学生たちの目に映るその男性の身長は,どんどん高くなった。たんなる学生と紹介したときには,173センチと思われたのに,講師だと紹介すると,2.5センチ高く見られた。上級講師だと言うと,学生の目にはさらに2.5センチ高く映り,かなり異例のスピード出世で正教授へ昇進すると,なんと183センチになったのである。
リチャード・ワイズマン 殿村直子(訳) (2008). Qのしっぽはどっち向き?:3秒で人を見抜く心理学 日本放送出版協会 pp.172
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