いちばん効果的な口説き文句は何だったのだろう?私たちはいちばんの人気者と嫌われ者とを比較した。モテ男になりそこなった人は,「ここへはよく来るの?」という陳腐な質問や,「ぼくはコンピューター関係の博士号を持ってます」とか,「友達にヘリコプターのパイロットがいて」というような自慢話で泥沼にはまっていた。恋の達人は,変わった方法で相手から話を引き出していた。いちばん人気があった男女の質問をお見せしよう。男性は,「君が有名人そっくりショーに出るとしたら,だれになりたい?」女性は「ピザのトッピングになるとしたら,何になりたい?」だった。
このような話題が,なぜそんなに人気をさらったのだろう?その答えの鍵は,ストローと変な声に関するちょっと変わった実験にありそうだ。
2004年に,心理学者のアーサー・アロン(1974年に橋の実験をした人)とニューヨーク州立大学ストーニーブルック校のバーバラ・フレイリーが,見知らぬ人同士を無作為に組ませて,やや変わった行動をとらせた。1人は目隠しをされ,もう1人は歯でストローを咬む(すると,変な声になる)。2人はそれから,一連の作業をやらされたが,実験社の意図は2人を笑わせることにあった。目隠しをされた人は,耳から聞こえる声だけでダンスのステップを習うが,ステップの指示を読む人はストローをくわえたままなので,おかしな声だった。にぎやかな実験はさらに続き,好きなテレビコマーシャルを,自分の造語でまねるように言われた。もう1つのグループは,同じことを普通にまじめに行った。普通とは,目隠しせず,ストローをくわえず,造語ではなく普通の英語で物まねしたということだ。最後に,全員にアンケートを行い,どれぐらいおもしろかったかを尋ねた。目隠し,ストロー,造語のほうが,なしの場合よりも,はるかにおもしろがられていた。そして,とどめの質問,「あなたはパートナーにどれぐらい親近感を感じましたか?2つの輪を重ねて表現してください」については,ユーモラスな体験を共有した人たちは,はるかに強い親近感を抱き,相手に魅力を感じていた。
私たちのスピードデートの実験で人気抜群だった口説き文句は,おそらく口にストローをくわえて変な声を出すような効果があったのだろう。愉快な経験を共有すると,親近感が生まれ,魅力を感じるようだ。
リチャード・ワイズマン 殿村直子(訳) (2008). Qのしっぽはどっち向き?:3秒で人を見抜く心理学 日本放送出版協会 pp.186-188
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