さらに,双曲割引を補正すべく各種の手口を学習したところで,それは一次的選好実験の障害にはならないことがわかった。原型的な代用報酬であるお金——なぜ「代用」かといえば,それは被験者たちが後で自分の欲しい物を買えるようにすることでしか影響を持たず,さらに代替案の計測と比較をうながすからだ——ですら,Dに応じて選好が変わる。同じ部屋にいる多数の人に,コンテストに入賞してすぐに換金できる100ドルの小切手と,保証つきだが3年間は現金化できない200ドルの小切手とどっちを選ぶか尋ねてみると,半数以上はすぐに100ドルもらうほうがいいと述べる。じゃあ6年後の100ドルと9年後の200ドルではどうかと尋ねると,ほとんど全員が200ドルを選ぶ。でも,後者は前者と同じ選択を6年手前で行ったに過ぎない。
ジョージ・エインズリー 山形浩生(訳) (2006). 誘惑される意志:人はなぜ自滅的行動をするのか NHK出版株式会社 pp.53
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