2人の人が利益を繰り返し山分けする場合,半々とか6対4とか9対1とかいろいろ分け方は可能だ。でも明確な一線は半々の一線となる。酒を控えたいなら,1日2杯とか3杯とか「酔いがまわるまで」とかいろいろな線の引き方はあるけれど,他から突出した一線とは,一滴たりとも口にしない,というものだ。もし食べる量を減らしたいなら,各種ダイエットからどれか選んで,そのダイエット方式の指示(Xカロリー以上は食べるな,Yという食物群からはXグラム以上は食べるな)をもっとはっきりしたものに変えて守りやすくできる(タンパク質だけ,液体だけ,果物だけ)。でも,まったく食事をしないのは不可能だから,本当に明確な一線は存在しない。アル中から立ち直る人に比べて過食症から立ち直る人が少ないのは,このせいかもしれない。
ジョージ・エインズリー 山形浩生(訳) (2006). 誘惑される意志:人はなぜ自滅的行動をするのか NHK出版株式会社 pp.144-145
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