集合的な意思決定は合意形成といっしょくたに考えられることが多いが,集団の知恵を活用するうえで合意は本来的には必要ない。合意形成を主眼に置くと,誰かを刺激することもない代わりに誰の感情も害さないような,どうでもいい最大公約数的なソリューションになりやすい。合意志向のグループは慣れ親しんだ意見ばかり大事にして,挑発的な意見は叩きつぶすからだ。
この「みんなで仲良くしようヨ」的アプローチが生み出す問題は,第二次世界大戦後に多くの企業がつくりだした無限とも思えるマネジメントの階層によってますます悪化した。意思決定プロセスにできるだけ多くの人を参加させようとすると,企業のトップはほかの人たちが本当に考えていることからますます隔絶されるという矛盾が起きるのだ。意思決定の前にマネジメント層ごとに綿密に検討を加えるので,ソリューションの質も落ちていく。
ジェームズ・スロウィッキー 小高尚子(訳) (2006). 「みんなの意見」は案外正しい 角川書店 pp.219-220.
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