1866年に大西洋横断電信サービスが始まるまでは,“池(ポンド)”(大西洋)の向こう岸までメッセージを送るのに3週間ほどかかっていた。船で大西洋を渡るのにそれだけかかっていたということだ。汽船(一般的になったのは1890年代)に乗って超特急で渡っても,2週間かかった(最短記録は8〜9日)。
それが電報だと,300語のメッセージで送信時間は7〜8分。とてつもない通信時間の短縮が実現したわけだ。送信スピードはもっと速くなることさえあった。1961年12月4日付の《ニューヨーク・タイムズ》によると,7578語あったエイブラハム・リンカーンの一般教書演説を,ワシントンDCから全国各地へ送信するのに要した時間は,92分だった。毎分82語のスピードで送信したことになる。そのスピードなら,300語のメッセージを送るのに4分もかからない。それでも2週間が7分半になったのだから,通信時間は2500分の1に短縮されてしまったわけだ。
インターネットによって,ファックスで10秒かかっていた300語のメッセージの送信時間が,2秒ほどにまで縮められたが,これは5分の1の短縮にすぎない。インターネットによる送信時間の短縮は,メッセージが長くなればなるほど大きくなる。たとえば,3万語の文書を送るとなると,ファックスなら16分(960秒)以上かかるのに,インターネットでは10秒(読み込む時間も入れて)ですむから,送信スピードは100倍近くになったと言える。しかし,電報が達成したのは2500倍だ!
ハジュン・チャン 田村源二(訳) (2010). 世界経済を破綻させる23の嘘 徳間書店 pp.66
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