1980年代以来,自由市場を信奉するエコノミストたちは「インフレは経済に悪いので,なんとしてもインフレ率を超低水準(理想的にはゼロ)に抑えて,経済を安定させないといけない」ということを他の人々にも信じ込ませようとしてきた。彼らが目標として推奨したインフレ率は1〜3%で,それはMIT(マサチューセッツ工科大学)の元経済学教授で,1994年から2001年までIMP(国際通貨基金)のチーフ・エコノミストを務めた,スタンレー・フィッシャーが考案したものだった。
ところが,低いレベルのインフレが経済に悪いという証拠は,実はまったくないのだ。たとえば,自由市場経済学者たちがシカゴ大学,IMFといった機関でおこなった研究でも,8〜10%未満のインフレは経済成長率にまったく影響をおよぼさない,という結果が出ている。経済成長に影響をおよぼさないインフレ率を20%,いや40%まで高めた研究さえある。
ハジュン・チャン 田村源二(訳) (2010). 世界経済を破綻させる23の嘘 徳間書店 pp.88-89
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