要するに,80年代以降わたしたちは,「金持ちがより多くの富を創出して,他のどんな方法よりもパイを大きくしてくれる」と信じて,彼らにより大きなパイの分け前を与えてきたのだ。で,金持ちの分け前はたしかに大きくなった。ところが彼らが実際にやったことは,パイが大きくなるスピードをゆるめるということだった。
問題はつまり,投資家に所得を集中させたところで,当の投資家が投資を増やさなければ,成長の加速はないということ。スターリンがゴスプラン(国家計画委員会)に所得を集中させた場合は,少なくともそれは確実に投資に向けられたはずだ。だが資本主義経済にはそのような仕掛けはない。だから実際には,80年代以降,所得格差が拡大したにもかかわらず,すべてのG7(アメリカ,日本,ドイツ,イギリス,イタリア,フランス,カナダ)および大半の発展途上国で,投資の対GDP比率は下落した。
ハジュン・チャン 田村源二(訳) (2010). 世界経済を破綻させる23の嘘 徳間書店 pp.198
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