スポーツ選手の験担ぎは有名だ。験担ぎの始まりは,たいてい,誰でも持っているような何でもない習慣なのだが,それが重大な結果(試合に勝つのもそのひとつだ)と結びつくと,人生を乗っ取ってしまいかねない。手の込んだ験担ぎをすることでは誰にも負けないというか,とにかくバカ正直なまでに公然と験担ぎをしていたのは,一流テニス・プレイヤーのエレナ・ドキッチだろう。第1に,彼女はコートの白いラインを踏まなかった(ジョン・マッケンローと同じだ)。審判の左側に座りたがった。ファースト・サーブの前には5回,セカンド・サーブの前には2回,ボールをついた。相手のサーブを待つ間に,自分の右手にふっと息を吹きかけた。ボール・ボーイ,ボール・ガールは,彼女にボールを渡す時は,アンダースローで投げなければならなかった。ドローシートは一度に一通り目を通したら二度と見ないと決めていた。極めつけは,スポーツ雑学コレクターにお勧めのネタ。彼女はトーナメントの間中,同じウェアを着続けた。臭っ!
ブルース・M・フード 小松淳子(訳) (2011). スーパーセンス:ヒトは生まれつき超科学的な心を持っている インターシフト pp.47-48
(Hood, B. (2009). Supersense: Why We Believe in the Unbelievable. London: HarperCollins.)
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