うまい手品を嫌いな人はいない。なぜか?誰も魔法を信じていないからだ。物が空中で消えてなくなると私たちが本気で信じていたら,奇術師が造り出す錯覚に仰天してなどいられない。マジックがうまくいくのは,私たちが世界について信じていることの裏をかくからである。マジックを観ると,私たちはびっくりして目を見張り,とまどいながらも拍手喝采して,もう一度観たいと思う。赤ちゃんたちにしても,ある程度は同じだ。一斉に拍手を贈ってアンコールと叫ぶことはできなくても,奇術師のトリックが生み出す不思議な結果を普段よりも長く凝視する。このあり得ない結果を凝視している時間を測って,考えられる結果を見ている時間と比較するだけで事足りるのだ。
ブルース・M・フード 小松淳子(訳) (2011). スーパーセンス:ヒトは生まれつき超科学的な心を持っている インターシフト pp.151
(Hood, B. (2009). Supersense: Why We Believe in the Unbelievable. London: HarperCollins.)
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