ロシアの心理学者ユージン・サボツキーは,単純な手品を使って幼児が魔術的思考をしていることを明らかにした。箱の中に切手を1枚入れて,彼ならではの訛りの強いロシア語でブツブツと呪文をつぶやき,箱を開けると2枚に切れた切手が現れる,という手品である。幼児たちは,破れた切手は元の切手と同じで,このロシア人が呪文で真っ二つにしたのだと信じた。年長の9歳児や大人たちは,切手をすり替えたに違いない,小さい子どもはだまされやすいからと言った。だが,大人はそれほど世の中のことに確信を持っているのだあろうか?この茶番は全部トリックだと思いながらも,サボツキーの箱にパスポートや自動車の免許証を入れるのは嫌がったのだから。万が一と思うと,リスクを冒せなかったのである。
ブルース・M・フード 小松淳子(訳) (2011). スーパーセンス:ヒトは生まれつき超科学的な心を持っている インターシフト pp.167
(Hood, B. (2009). Supersense: Why We Believe in the Unbelievable. London: HarperCollins.)
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