そうした化粧品を使用する根拠はほぼ例外なく,共感呪術の信奉にある。胎盤や用水など,生命力と関連のある原料から作られている製品がごろごろしている。中国の悪名高いカプセル入り漢方薬タイ・バオ(Tai Bao)は中絶されたヒト胎児を原料にしているそうだが,市販されているカプセル入り漢方薬の大半にも粉末にした人間の胎盤が使われているらしい。原料が人間,動物のいずれに由来しているにせよ,これらの若返りの薬の宣伝文句は,軟膏を塗るか,カプセルを飲めば,老化を止められる,遅らせられる,あるいは,若返ることさえできるとうたっている。実を言えば,こうした製品に,皮膚から吸収できる有効成分を含有しているものはほとんどない。それなら直接体内に取り込めばよいと考えるわけだが,そうした養分はどれもこれも,天然の胃酸によって分解されてしまう。実のところ,ホメオパシーのレメディ同様,多くの化粧品には有効成分と言えるものは何も含まれていないので,規制当局を煩わせる手間も省けているのだ。それでもなお,たいていの人は若さのエッセンスを吸収できると信じて疑わない。
ブルース・M・フード 小松淳子(訳) (2011). スーパーセンス:ヒトは生まれつき超科学的な心を持っている インターシフト pp.262-263
(Hood, B. (2009). Supersense: Why We Believe in the Unbelievable. London: HarperCollins.)
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