見つめられている時に私たちの内に喚起される情動は,他人の視線をエネルギーの伝達として感知できるという直感的な認識をいともたやすく増強する(エネルギーが伝わるのでなければ,彼女に見つめられて,こんなふうに感じるはずはあるまい?)。そこで,他人に囲まれていて,突然落ち着かない気分になる,という状況について考えてみよう。他人の視線をエネルギーとして感知するというこの素朴な理論,落ち着かない気分を感じて,やはりそうだったと証明された場合のことはひとつ残らずすぐに思い出せるのに,間違っていた場合はいつも都合よく忘れてしまう。理論というものは得てしてそうなのだが,この理論にも,私たちがまず真実だと思ったことを裏付ける証拠を探そうとするバイアスが作用しているのだ。
ブルース・M・フード 小松淳子(訳) (2011). スーパーセンス:ヒトは生まれつき超科学的な心を持っている インターシフト pp.338
(Hood, B. (2009). Supersense: Why We Believe in the Unbelievable. London: HarperCollins.)
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