ヘルシンキ大学のマルヤーナ・リンデマンが先頃,この信念と理性の2次元モデルと素朴な直感的理論が担っている役割の検証を行った。成人フィンランド人3000人余を対象として,直感的推論とスーパーセンスの調査を実施したのだ。まず,調査対象者に超自然信念現象信奉について質問した。ここで言う超自然現象信奉は宗教的なものと非宗教的なものの両方である。次いで,直感的な誤概念も評価した。世界の物理的,生物学的,心理学的な側面について,調査対象者が抱いているアニミズム,目的論的推論,擬人化,生気論,中心概念の混乱に関する質問を行ったのだ。いずれも,子どもたちが独力で自然に推論するので,誤概念につながることもある分野である。質問の内容は,「夏になって気温が上がると,花は咲きたいと思うのでしょうか?」,「古い家具は昔のことを知っているのでしょうか?」といったもので,締めくくりに,直感的な反応と熟慮した上での分析的推論のどちらの思考スタイルを好むか尋ねてみた。
その上で,スーパーセンスを強く感じる成人を懐疑的な成人と比較したところ,信じやすい人のほうが,ある概念カテゴリーの属性を別のカテゴリーにも誤ってあてはめる傾向が強いことが分かった。たとえば,古い椅子は昔の出来事を覚えている(無生物に心的属性を持たせる),思いは他人に伝わる(心理状態に物理的属性を持たせる)といった答えが多かったのは,信じやすい人たちだった。目的論的に見ると混乱の度合いがいっそう強く,アニミズムと擬人化の傾向も強く見られた。また,信じやすい人には生気論者が多く,物事は世界とつながっているという意識をいだいていた。彼らは教育水準が低かったのかと思うだろう?答えはノーだ。全員,大学生だったのだから。しかも,他の合理性を測る尺度で評価した結果も,疑り深い学生と大差なかった。つまり,同一人物が合理性と超自然現象信奉とを兼ね備えているということである。彼らはエリートと言えども,直感的な思考法を好む,あるいは直感的な思考法に頼りやすいただの人だったのだ。
ブルース・M・フード 小松淳子(訳) (2011). スーパーセンス:ヒトは生まれつき超科学的な心を持っている インターシフト pp.359-360
(Hood, B. (2009). Supersense: Why We Believe in the Unbelievable. London: HarperCollins.)
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