実験による干渉は途方もなく重要なものである。なぜなら,それなしには,観察している相関関係がなんらかの因果的な意義をもつことをけっして確信することができないからだ。そのことはいわゆる「教会の時計の誤謬」で例証することができる。2つの隣接した教会の塔の時計が時を告げるのだが,セントA教会のほうがセントB教会よりもほんのわずか先に告げる。このことに気づいた火星人が,セントA教会のほうがセントB教会の鐘の原因ではないかと推測するかもしれない。私たちはもちろん,そうでないことをよく知っているが,実際のところ,この仮説の真偽を確かめる唯一のテストは,セントA教会の鐘を1時間に1度ではなく,実験としてランダムな時間に鳴らすことだろう。火星人の予想(この場合には,もちろん反証されてしまうだろう)は,セントB教会の鐘はやはり,セントA教会の鐘が鳴った直後に鳴るだろうというものである。観察された相関関係が本当に因果関係を示しているかどうかを決定できるのは,実験的な操作だけなのである。
リチャード・ドーキンス 垂水雄二(訳) (2009). 進化の存在証明 早川書房 pp.130-131
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