このような発見のパターンを説明しようとする創造論者たちの試みは,しばしば高級喜劇の域に達する。創造論者に言わせれば,主要な動物分類群の化石が発見される順序を理解するための鍵は,ノアの洪水にあるのだそうだ次に示すのは,賞を貰っている創造論者のウェブサイトから直接引用したものである。
地層に見られる化石の配列は次のことを示している。
(1)無脊椎動物(動きののろい海生生物)は,真っ先に消滅し,それについで,もう少し動きの活発な魚類が洪水の汚泥に押しつぶされるだろう。
(2)両生類(海に近い)が次に,水位の上昇にともなって消滅するだろう。
(3)爬虫類(動きののろい陸上動物)が次に死ぬ。
(4)哺乳類は水位の上昇から逃げることができ,より大型で,逃げ足の速い動物が最後まで生き残れた。
(5)人類は知恵を働かすだろう——丸太にしがみつくといったことをして,洪水から逃れる。
このような経緯は,地層にさまざまな化石が発見される順序を,申し分なく満足がゆくように説明してくれる。それは動物たちが進化した順序ではなく,ノアの洪水のときに水没していった順序なのである。
この驚くべき説明に異論を唱えるべき他のあらゆる理由をさしおいても指摘しておきたいのだが,哺乳類が平均して爬虫類よりも水位の上昇からうまく逃げることができるという統計的傾向がいったいどこに存在するというのか。それどころか,進化論にもとづいて予想されるように,地質学的な記録における下の地層には,文字通り哺乳類はまったく存在しないのだ。
リチャード・ドーキンス 垂水雄二(訳) (2009). 進化の存在証明 早川書房 pp.174-175
PR