最大の空白,そして創造論者がいちばん好きなのが,いわゆるカンブリア紀大爆発に先立つ空白である。5億年以上昔のカンブリア時代に,大きな動物門——門は動物の世界における主要な区分——のほとんどが,化石記録のなかに「突然」現れる。突然に,というのは,カンブリア紀より古い地層にはこれらの動物群の化石が知られていないという意味であって,瞬間的にという意味での突然ではない。ここで語っている期間は2000万年ほどに及ぶものである。5億年以上も昔の話だから,2000万年が短く感じられるだけだ。しかしもちろん,それは現在の2000万年と正確に同じだけの時間が進化に必要だったことを表している。いずれにせよ,やはりきわめて突然であり,私が以前の本で書いたように,カンブリア紀は,多数の主要な動物門を私たちに示した。
リチャード・ドーキンス 垂水雄二(訳) (2009). 進化の存在証明 早川書房 pp.232
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