この件全体から引き出される結論に耳を傾けてみよう。個体発生には全体的な計画は存在しないし,青写真も,建築家の図面もなければ,建築家もいない。胚の発生,そして究極的には成体の発生は,局所的な基盤で他の細胞と相互作用する細胞に実装されたローカル・ルールによって達成される。細胞の内部で起こっていることも,同じように,分子,ことに細胞内および細胞膜内にあって,他の同じような分子と相互作用するタンパク質分子に適用されるローカル・ルールによって,支配されている。またしても,ルールはすべて局所的(ローカル),どこまでも局所的である。受精卵のDNAの文字の配列を読んで,その動物が成長してどうなるかを予測することは誰にもできない。それを知る唯一の方法は,その卵を自然なやり方で育て,何になっていくかを見ることだ。
リチャード・ドーキンス 垂水雄二(訳) (2009). 進化の存在証明 早川書房 pp.360
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