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I'm Standing on the Shoulders of Giants.

読んだ本から個人的に惹かれた部分を抜き出します。心理学およびその周辺領域を中心としています。 このBlogの主な目的は,自分の勉強と,出典情報付きの情報をネット上に残すことにあります。書誌情報が示されていますので,気になった一節が見つかったら,ぜひ出典元となった書籍をお読みください。

   

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何のパーセンテージか

 遺伝子そのものを用い,それが指定するタンパク質よりもむしろ遺伝子を種間で直接に比較するという方法もある。そうした方法のなかでもっとも古く,もっとも効果的なものの1つは,DNAハイブリダイゼーションと呼ばれる。DNAハイブリダイゼーションは通常,「ヒトとチンパンジーは遺伝子の98%を共有している」といった線に沿った発言の背後にしばしばあるものである。ところで,ここに示されたような数字によって正確に何が意味されているかについては,若干の混乱がみられる。何の98%が同じなのか?正確な数字は,数える単位がどれほど大きいかに依存する。単純な1つの喩えが,そのことを,ある興味深いやり方で明らかにする。なぜ興味深いかといえば,この喩えと,実在のモノのあいだの相違は,類似に劣らず啓発的だからである。同じ本の二種類の版があって,両者を比較したいと思っていると仮定してみよう。ひょっとしたら,それはダニエル書かもしれない。そして私たちは,正典版と死海を見下ろす洞窟内からちょうど発見されたばかりの太古の巻物版とを比較したいと思っている。二種類の本の各章の何%が同じだろう?おそらく0%だろう。なぜなら,章全体のなかのどこかに1ヵ所でも不一致があるだけで,両者が同じではないと言えるからだ。その文の何パーセントが同じだろう?今度は一地のパーセンテージがずっと高くなるだろう。単語が同じパーセンテージは,と問えば,一致度はさらに高くなるだろう。なぜなら,単語は文よりも文字数が少ない——一致が破れる確率が小さくなる——からである。しかし単語の類似でさえも,単語の一文字でもちがっていれば崩れてしまう。したがって,もしあなたが二種類のテキストを横に並べて,一文字ずつ比べていけば,同じ文字のパーセンテージは同じ単語のパーセンテージよりもさらに高くなるだろう。それゆえ,「98%が共通」といった推計は,比較している単位を特定しないかぎり,なんの意味もない。

リチャード・ドーキンス 垂水雄二(訳) (2009). 進化の存在証明 早川書房 pp.447-448
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