2008年の10月に,およそ60人のアメリカの高等学校の教師たちのグループが,ジョージア州アトランタにあるエモリー大学の科学教育センターで会合をもった。彼らが持ち寄った戦慄すべき話のいくつかは,広く関心を寄せられる価値がある。1人の教師は,進化を勉強すると告げたとたん,生徒たちが「ワッと泣き出した」と報告した。もう1人の教師は,教室で進化について話を始めると,生徒たちが繰り返し,「ノー!」と叫び出す様を描写した。また別の教師は,生徒が,進化論は「理論にすぎない」のに,なぜ学習しなければならないのか理由を教えてほしいと要求したと報告した。さらにまた別の教師は,いかにして「教会が,私の授業を妨害するために質問する特殊な疑問を生徒に訓練してこさせる」かについて述べた。ケンタッキー州の創造博物館は,博物館という高度な施設を使って歴史否定論にひたすら専心する,財政的支援をふんだんに受けた組織である。子供たちは,鞍のついた恐竜模型に乗ることができるが,それはただの,ちょっとした遊びではない。そのメッセージは恐竜が最近まで生きており,人類と共存していたという,あからさまで,紛れようのないものである。この博物館は<アンザーズ・イン・ジェネシス>によって運営されているが,これは非課税組織である。納税者,この場合には米国の納税者は,科学的な嘘,誤った教育に,大がかりな規模で財政援助をしていることになる。
リチャード・ドーキンス 垂水雄二(訳) (2009). 進化の存在証明 早川書房 pp.596-597
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