イギリスには,上限金利の規制がありません。貸金業者はどのような金利をつけるのも自由で,短期資金を融通する業者は1日1パーセント程度の貸出金利を設定しています。これを福利で年利換算すると約2700パーセント。日本の上限金利は金額に応じて年15〜20パーセントですから,とてつもない暴利ということになります。
市民派の主張するように,高い金利が自殺の原因になるのなら,イギリスでは日本よりはるかに多くの自殺者が出るはずです。ところがイギリスの自殺率(6.4)は日本(25.8)の4分の1しかありません。上限金利と自殺に因果関係があるとするならば,金利を引き下げるのではなく,イギリスのように上限金利を撤廃して,すべての金融業者を法の管理の下に置くべきなのです(上限金利規制がなくなれば,闇金は存在しなくなります)。
イギリスでも過去,上限金利の導入が検討されたことがありました。しかしそのときは,貧しいひとたちが短期資金を借りられなくなるという理由で,消費者保護団体が率先して規制に反対したといいます。その一方で日本では,武富士をはじめとして大手消費者金融がつぎつぎと経営破綻し,個人ばかりか中小企業までもが短期資金を求めて闇金に駆け込んでいきます。
いつの時代も,地獄への道は善意によって敷き詰められているのです。
橘 玲 (2011). 大震災の後で人生について語るということ 講談社 pp.84-85
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