極意というものはなく,ただただ,試してみよう,やってみよう,ということである。子供の頃を思い出そう。好奇心を取り戻し,新しいものに興味を持ち,今まで見なかったものを見て,聞かなかったことを聞いて,行かなかったところへ足を運んでみる。新しいことをすれば,きっとなにか新しいものが見つかる。それだけでも少し楽しくなる。
さらに,それについて考えてみよう。もっと自分にできることはないか,自分が望んでいるものは何だろうか,それを実現する方法はないのか,何をすれば近づけるだうろか,とどんどん考える。考えて考えて考えぬく。考えれば,なにか思いつく。間違っていても良い。試してみれば,間違っていることはわかるし,それがわかることも前進である。間違っていた,とわかったときの楽しさを知ることになるだろう。失敗して,大笑いできるはずだ。人が用意したコースならば腹が立つが,自分が決めた道ならば,絶対に腹は立たない。そういうふうに人間はできているのである。
森博嗣 (2011). 自分探しと楽しさについて 集英社 pp.79-80
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