1999年に,オーストラリア国立大学精神センターの心理学者アラン・シュナイダーが,サヴァンのあらゆる才能を統一する理論を述べた論文を発表した。博士の説が正しいのであれば,おそらく,動物の天才の説明にもなるだろう。シュナイダー博士と共著者のD・ジョン・ミッチェル博士によると,サヴァン自閉症の人の能力はすべて,見たり聞いたりしたものを,ふつうの人のようにすみやかに,統合した全体,つまり概念に組み込んで処理しないところから生まれる。
ふつうの人が建物を見ると,知覚経路を通って入ってくる何千何百もの建物の部分のすべてを,脳が,ひとつの統合されたもの,建物に変換する。脳はこれを自動的におこなう。ふつうの人はこれをせずにはいられない。だから,美術の先生はふつうの絵画の練習で,さかさまにした絵を見たとおりに写生させたり,対象そのものではなく,対象を取りかこむネガティヴスペースを描かせたりする。対象をさかさまにしたり,ネガティヴスペースを描いたりして脳をだますと,もっと簡単にイメージをばらばらのままにすることができ,自分で統合した対象の概念ではなくて,対象そのものを描けるようになる。人はいつも,自分が描いたさかさまの絵のすばらしさに,あっと驚く。
テンプル・グランディン&キャサリン・ジョンソン 大橋晴夫(訳) (2006). 動物感覚 アニマル・マインドを読み解く 日本放送出版協会 p.392.
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