高校では,偏差値の高い難関校,特に国公立大学や一部の有名私大にどれだけの合格者を出すかが,進路指導の最優先課題になっています。偏差値×合格者数という掛け算の考え方が優先され,生徒一人ひとりの希望がどのようにかなえられ,入学した大学での経験が生徒の未来にどのように結びつくかといった観点は,後回しにされてしまいがちです。「この大学にどうしても行きたい!」と本人が強く望んでいても,高校の先生がそれに反対する。本人の志望とは関係なしに,国公立大学の受験を促したり,AO入試に必要な書類を用意してくれなかったりする。これは私が,大学の入試担当者から聞いた実際の話です。その担当者は,「学校の先生に反対されていて……私,どうしたらいいんでしょうか」と半泣き顔で訴える高校生の姿を見て,高校の「進路指導」に憤りを覚えたとのことです。
実のところ,高校教員の方々も非常に気の毒です。というのも高校関係者はいま,中学の教員や保護者から,「名門大学に,何人進学させたか」という軸だけで評価されているからです。そうでなければ,誰だって前述したような「指導」はしたくないでしょう。
倉部史記 (2011). 文学部がなくなる日 主婦の友社 pp.161-162
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