実際,私たちが求めているのは,「真の独自性」と言えるほど極端ではないものだ。あまりにもユニークなものには,興ざめする。先ほど紹介した,点の個数を当てさせる実験を行った研究者たちは,同じ実験を方法を少し変えて行った。このときも,前と同じように,一部の協力者には,点の数を実際より多めに推測する多数派に属していると言い,一部には少なめに推測する少数派に属していると伝えたが,残りの協力者には,あまりにも特異な結果が出たため,「過大評価なのか,過小評価なのか,分類不能」だったと告げた。この実験でも,先と同じように過大評価者は自尊心が低下し,過小評価者は自尊心が高まったが,あまりに特異なため分類不能と言われた人たちも,自尊心が急低下したのである。わたしたちが一番心地よく感じるのは,「ちょうどよい」位置につけているとき,つまりその他大勢と区別されるほどには特殊でいて,定義可能な集団に属しているときだ。
シーナ・アイエンガー 櫻井祐子(訳) (2010). 選択の科学:コロンビア大学ビジネススクール特別講義 文藝春秋 pp.115
(Iyengar, S. (2010). The Art of Choosing. New York: Twelve.)
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