たとえば最近ではほとんどの企業が,採用プロセスの一環として,「あなたについて聞かせて下さい」式の古典的な就職面接を行っており,この面接だけで応募者を評価する企業も多い。だが実はこういった従来型の面接は,応募者の将来性を予測する上で,最も役に立たない手段の1つだ。なぜかと言えば,面接官は最初のわずかなやりとりをもとに,無意識のうちに候補者の評価を決めてしまうことが多いからだ。たとえば自分と性格や興味が似た応募者に好意的な反応を示し,面接の残り時間をかけて,その初印象を裏づけるために,ひたすら証拠を集めたり,質問を構成したりするのに終始する。「以前の仕事では高い地位に就いておられたのに,やめられたんですね。かなり野心的とお見受けしましたが?」と,「あまり仕事に打ち込んでいなかったんですね」を比べて欲しい。つまり面接官は,候補者が社員としてふさわしい人材かどうかを明確に示す重要情報を,見過ごしがちなのだ。それよりも,候補者のサンプルを入手するとか,困難な状況設定にどう対処するかを質問するなどの,より構造化された手法の方が,応募者の将来性を測る判断材料としてはるかに優れている。一説には,伝統的な面接の3倍近く信頼性が高いという。
シーナ・アイエンガー 櫻井祐子(訳) (2010). 選択の科学:コロンビア大学ビジネススクール特別講義 文藝春秋 pp.157-158
(Iyengar, S. (2010). The Art of Choosing. New York: Twelve.)
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