実際,コカ・コーラはいろいろなものを象徴しているが,その1つがクリスマスなのだ。サンタクロースを想像するとき,あなたはどんな姿を思い描くだろうか?赤い服に帽子,黒いブーツにベルトを身に着けた,太った陽気なおじさんが,赤ら顔に満面の笑みを浮かべているイメージではないだろうか?スゥエーデン人画家のハッドン・サンドブロムが,世界中ののどの渇いた子どもたちにサンタクロースがコーラを届けている広告を描くようコカ・コーラ社に依頼されて,このイメージを生み出した。
「サンドブロムのイラストが登場する前は,クリスマスの聖人は,青や黄や緑や赤のさまざまな服を着ていた」とマーク・ペンダーグラストが著書『コカ・コーラ帝国の興亡 100年の商魂と生き残り戦略』(1993年,徳間書店)に書いている。
「ヨーロッパの美術作品では,たいてい背が高くやせた人物として描かれていたが,クレメント・ムーアは詩『聖ニコラスの訪問』の中で,サンタを妖精として描いている。だがソフトドリンクの広告が登場してからというもの,サンタは大柄で肉付きのよい,太いベルトと腰までの黒長靴を身に着けた,陽気なおじいさんというイメージが定着した」
サンタの服がコーラのラベルとまったく同じ色の赤だということに,あなたは気づいていただろうか?それは偶然ではない。コカ・コーラ社はこの色の特許を取得している。サンタクロースは明らかに,コカ・コーラの宣伝マンなのだ。
シーナ・アイエンガー 櫻井祐子(訳) (2010). 選択の科学:コロンビア大学ビジネススクール特別講義 文藝春秋 pp.201-202
(Iyengar, S. (2010). The Art of Choosing. New York: Twelve.)
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