わたしたちには自分で選択したいという欲求があるため,選択肢がある状態を,心地よく感じる。「選択」という言葉は,いつでも肯定的な意味合いを帯びている。逆に,「選択の余地がほとんどなかった」というのは,選択肢が少ししかない窮地に立たされた不運を弁解,説明する言い方だ。選択の余地があるのが良いことなら,選択肢が多ければ多いほど良いはずだという連想が働く。幅広い選択肢には,たしかに良い面がある。だがそれでもわたしたちは混乱し,圧倒されて,お手上げ状態になるのだ。「もうわからない!選択肢が多すぎる!だれか助けてくれる人はいないの?」。挫折に負けずに,選択肢の氾濫のマイナス面をプラスに変えていく方法はあるだろうか?ありあまるほどの選択肢を前にしたとき,わたしたちの中では何が起こるのだろう?そしてその結果,どんな問題が生じるのだろう?
シーナ・アイエンガー 櫻井祐子(訳) (2010). 選択の科学:コロンビア大学ビジネススクール特別講義 文藝春秋 pp.220
(Iyengar, S. (2010). The Art of Choosing. New York: Twelve.)
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