フランスの数学者,科学思想家のアンリ・ポアンカレはこう言った。「発明とは,無益な組み合わせを排除して,ほんのわずかしかない有用な組み合わせだけを作ることだ。発明とは見ぬくことであり,選択することなのだ」。わたしなら後の文をちょっと変えて,違う説を唱える。「選択とは,発明することなのだ」。選択は,創造的なプロセスである。選択を通じてわたしたちは環境を,人生を,そして自分自身を築いていく。だがそのために多くの材料を,つまり多くの選択肢をやみくもに求めても,結局はそれほど役に立たない組み合わせや,必要をはるかに超えて複雑な組み合わせをいたずらに生み出すだけで終わってしまうのだ。
シーナ・アイエンガー 櫻井祐子(訳) (2010). 選択の科学:コロンビア大学ビジネススクール特別講義 文藝春秋 pp.258-259
(Iyengar, S. (2010). The Art of Choosing. New York: Twelve.)
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