以下のようなことが生じていれば,「顧客よりも組織を重視する」症状が出ている証拠である。
・「社会的にどうか」「顧客にどのような影響が及ぶか」ではなく,「自分達はどうなるのか」「組織内への影響はどうか」で物事を決めようとする。
・自分達のやっていることを社会的に意味があることにすりかえる。経営理念や会社方針,ビジョンにこだわり,それが現実の会社の姿や日常業務と乖離していく。
・社員の考え方が幼稚になる。ありきたりなこと,教科書的なこと,著名人がいったことを,あたかも自分の主張のように声高に発言する人が多くなる。
・顧客や社会の評価よりも,上司や社内の評価を重視する人が増える。
・「数字を達成しているのは社会に認められている証拠」という理屈がまかり通る。この理屈は間違ってはいないのだが,それが強く言われだして,顧客よりも数字を重視するようになると,会社は誤った方向に進む。営業力が強いといわれながらも消えていった会社の多くは,社内でもこのようなことが言われていた。
・「ゴマすり」をする人が増える。経営者や管理職が自分の保身ばかりを考えている。会社の中に派閥が見られる。
・社内の動きに悪い意味での「軽さ」が見られる。例えば組織改革や営業革新に関するプロジェクト・チームが乱立する。
・組織的に動くことが強要される。個人プレー的な動きをする者は,社外で認められても「チームワークがない」として社内で評価されない雰囲気がある。
・ビジネスよりもマネジメントが重視される。顧客に価値を提供することよりも,会社を続けることのほうが優先される。
深田和範 (2010). マネジメント信仰が会社を滅ぼす 新潮社 pp.78-79
PR