とくに「〜すべき」思考は,日本社会の自由気ままな風潮とは逆行してますます強くなってきているように思えます。
なぜそうなるのでしょう?その背景となるものには,「世間」というものが考えられます。日本人にとって世間は空気のような存在でありながら,その思考や行動の方向を決定づける大きな役割を果たしています。日本人はなにか行動をする時,世間の目を絶えず意識します。
世間の常識や価値観と照らし合わせてみて自分がどう見られるかがひじょうに重要なのです。自分の行動が世間の枠から外れるようなおかしなものでないかをとても気にするのです。
つまり,世間は日本人にとって思考や行動の大きな基準となっているわけです。特定の宗教を持たない多くの日本人にとって世間は宗教のようなものと言えるかもしれません。
世間はこのように存在しているため,日本人はその枠に収まるような思考と行動をとる習性を傾向的に持っています。そこで生まれるのが,こんなふうに考えるべき,こんなふうに行動をするべきだという,「〜すべき」思考ではないでしょうか。「〜すべき」思考の背景にはこうした世間の存在が確固としてあると思います。
植木理恵 (2010). ウツになりたいという病 集英社 pp.34-35
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