ではなぜ,価値観の種類が増えることで世間のフレームは広がらないのでしょうか。広がるどころか窮屈な感じになっているのはなぜでしょうか。
これは価値観の多様化によって,逆に大きな力のある価値観に皆が自分のよりどころを求めるということではないでしょうか。要するに世間の価値観はかえって画一化してきているということではないでしょうか。
つまり,わかりやすい喩えで言うと,こういうことなのだと思います。モノを買う時に選択肢が多いと,人気商品を選んでしまうことがままあります。すなわち人気があるということは,品質や性能に間違いはないだろうという保証になるわけです。
これと同じことが世間にたくさんある価値観を選ぶ際にも起きているのだと思います。あまりにも選択肢が多いので,自分で考えることができないし面倒だ。それにおかしな価値観を選んで人生に間違いがあったら嫌だ。だから保険になるようなメジャーな価値観や常識を選ぼうとなるわけです。
植木理恵 (2010). ウツになりたいという病 集英社 pp.38-39
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