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I'm Standing on the Shoulders of Giants.

読んだ本から個人的に惹かれた部分を抜き出します。心理学およびその周辺領域を中心としています。 このBlogの主な目的は,自分の勉強と,出典情報付きの情報をネット上に残すことにあります。書誌情報が示されていますので,気になった一節が見つかったら,ぜひ出典元となった書籍をお読みください。

   

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美容整形と世界大戦

 実際,顔のピーリングから眉毛リフトに至るまで現代の美容技術のほとんどは,源を第一次世界大戦とその直後数年間に求められるのだ。戦闘中に受けた傷,損なわれた容貌を外科医が治したのがそもそもの始まりである。大戦では,人体に対してなされ得る,それまでになく見るも無残な暴力の痕跡がこれでもかというほど残された。大戦以前に知られていた武器に比べて爆弾は強力になり,弾丸のスピードははるかに速く破壊力も大きくなった。外科医は創意工夫を凝らして腕を振るい,めちゃめちゃにされた人体を元通りに修復しなければならなかった。
 人間の顔は直接の標的となる。塹壕に押し込められた中で,迫撃砲や手榴弾の砲火に顔の柔らかい組織,繊細な骨が直撃されて負傷することがしばしばあった。大戦中非常に多く見られた怪我の一つは,顎を吹き飛ばされるというものだ。
 またこの戦争では,史上初めて飛行機が戦闘の道具として用いられた。飛行機のエンジンが火を噴くと,コックピットでシートベルトをつけた兵士は化学反応やガソリンによる火炎で恐ろしい火傷を負う。飛行機が墜落すると,パイロットの頭がコントロールパネルに激突して顔の骨は粉々になり,大きくひび割れた顔はピカソの作品ばりのグロテスクなマスクと化す。
 それ以前の戦争では,こうした事故に遭えば即死するか放置されて結局死ぬかだった。しかし医学全般の進歩のおかげで,原形をとどめないほどに損傷した患者も生かしておけるようになった。実のところ,戦時の死亡率は低下の一途をたどっている。第二次世界大戦では,戦闘中に負傷した米軍兵士の30%が死んだ。ベトナム戦争で死亡したのは負傷した兵士の24%。兵器の破壊力が増大したにもかかわらず,イラクとアフガニスタンでの死亡率は10%に低下した。そして第一次世界大戦のときと同じく,戦時の負傷には多くの場合整形手術が必要となる。

アレックス・クチンスキー 草鹿佐恵子(訳) (2008). ビューティー・ジャンキー:美と若さを求めて暴走する整形中毒者たち バジリコ pp.87-88
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