リーフにしてみれば,セラピー花ざかりの文化は宗教に取って代わり,アメリカ人は宗教的倫理観とピューリタン的美徳を基礎とした文明から,自分自身の向上のみに関心を向ける文明に変質してしまった,ということになる。「幸福感は,共同体のための崇高な目標に向かって努力する中で得られる副残物ではなく,それ自身が生きる目標となってしまった。それは,アメリカ文化の構成員全体の焦点が根本的に変わったことを示している——昔ながらの,絶望と希望という観点では説明できない人間の状態に焦点が移ったのである」。現代人にとって,セラピー文化——幸福を求める文化——はセレブと美容整形の文化に道を譲ったということになる。今ではもう,自己の向上に焦点を当てることはない。それより一段階先に進んでしまった。美しい仮面の創造だけが焦点なのである。
アレックス・クチンスキー 草鹿佐恵子(訳) (2008). ビューティー・ジャンキー:美と若さを求めて暴走する整形中毒者たち バジリコ pp.152-153
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