政治,富,社会のしきたりなどと同様,美においてもあらゆるものは相対的である。私の身長は180センチ,普段の体重は67キロ。ロサンゼルスだったら私は太って見苦しく,おしゃれなブティックのどこを探しても体に合うブルージーンズは見つからないということになる。ビバリーヒルズにあるセレブ御用達のシックなセレクトショップ,フレッド・シーガルに立ち寄ったなら,ハドソンの「スーパーモデル]ブルージーンズのコーナーから,スエットパンツや伸び伸び素材ドレスのコーナーか靴売り場に丁重に追い払われてしまうだろう(いくら太っていてもたいていの靴ははけるのだ)。フレッド・シーガルで買い物をする女性のお尻の大きさは,小学1年生のときの私のお尻ほどしかない。でもこれがニューヨークになると,私は少々太めの部類だけれど許容範囲であり,当世風の飛び抜けて高い身長がそれを補ってくれる。一方,ウィスコンシンでは,私は親戚から,ちょっと背が低いうえに病的な断食ダイエット中だと思われている。
アレックス・クチンスキー 草鹿佐恵子(訳) (2008). ビューティー・ジャンキー:美と若さを求めて暴走する整形中毒者たち バジリコ pp.266-267
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