さて,ここで声を大にしてお伝えしたいことは,「コモディティ化するのは商品だけではない」ということだ。「コモディティ化」は部品だけの世界の話ではない。労働市場における人材の評価においても,同じことが起きているのである。
これまでの「人材マーケット」では,資格やTOEICの点数といった,客観的に数値で測定できる指標が重視されてきた。
だがそうした数値は,極端にいえば工業製品のスペックと何ら変わりがない。同じ数値であれば,企業側は安く使えるほうを採用するに決まっている。先ほどの外資系企業の採用の話でいえば,「TOEIC900点以上」ならば誰でも同じ,という話なのである。
だからコモディティ化した人材市場でも,応募者の間で「どれだけ安い給料で働けるか」という給料の値下げ競争が始まる。
つまり資格やTOEICの点数で自分を差別化しようとする限り,コモディティ化した人材になることは避けられず,最終的には「安いことが売り」の人材になるしかないのだ。
瀧本哲史 (2011). 僕は君たちに武器を配りたい 講談社 pp.34-35
PR