グアノとは,海鳥の糞が堆積して化石化したもので,窒素質グアノと燐酸質グアノの二種類がある。前者は,降雨量の少ない乾燥地に堆積したもので,窒素分に富む。後者は,降雨量の多い高温地帯の珊瑚礁の上に堆積したもので,有機物の分解が進行して窒素が失われ,燐酸の割合が多くなったものである。また,燐酸質グアノは,長期的には風化して珊瑚礁などの石灰岩と結合し,グアノ質リン鉱石に変質する。もっとも,これらの区分は相対的なもので,明確に線引きができるわけではない。これらはいずれも良質なリン資源であり,特に窒素質グアノはそのまま良質な肥料となる。燐酸質グアノやグアノ質リン鉱石は,硫酸分解などの加工処理を行った上で,リン酸肥料として用いられる。
16世紀にインカ帝国を征服したスペイン人は,ペルー沖の島々に海鳥の糞の山があり,ケチュア族がそれを「フアヌ」と呼んで,良質の肥料として用いていることを報告している。グアノ(guano)とは,この「フアヌ」(huanu)が転訛したものである。このペルー産グアノは,19世紀はじめ,ドイツの博物学者アレクサンダー・フォン・フンボルトによって欧米に紹介された。1840年にペルー政府はグアノ資源を国有化し,欧米各国に売り込む。特にアメリカでは,大量の肥料を必要としたため,ペルーから莫大な量のグアノを輸入することになった。
長谷川亮一 (2011). 地図から消えた島々:幻の日本領と南洋探検家たち 吉川弘文館 pp.87-88
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