しかし,どうやってこの考えを,敵対的な態度を示している科学者たちに提示すべきだろう?ラインは実験を組み立てはじめた。当時好まれていた用語は,感覚器を経由しない知覚という意味の Extra-Sensory Perception(超感覚的知覚),あるいはその頭文字をとったESPだった。「とりあえず今は『超感覚的知覚』を用いることにする。できるかぎり普通に聞こえるようにしたい」とラインは説明した。ラインは,科学者たちがテレパシーをすんなり受け入れるはずがないことを承知していた。そして少しでも抵抗なく受け入れてもらえるようにするために,心霊主義[spiritualismの訳語で,人の死後の霊魂の存在を信じる立場]やウィジャボード[こっくりさんのような占い板]などのあやしい匂いがしない,学術的な用語を使いたかった。心理学者は知覚の研究をよくおこなっているから,「知覚」という言葉を含む用語を使うことで,少しでも聞こえがよくなればと願った。
ステイシー・ホーン ナカイサヤカ(訳) 石川幹人(監修) (2011). 超常現象を科学にした男:J.B.ラインの挑戦 紀伊國屋書店 pp.41
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